働きやすさと働きがい
2026/10/26
「働きやすい職場」と「働きがいのある職場」は何が違うのか?
一人ひとりの能力を活かす組織づくり
はじめに ― 働きやすい職場なら、働きがいも感じられるのか?
近年、企業において「働きやすさ」や「働きがい」の重要性が注目されています。残業が少ない、有給休暇が取得しやすい、柔軟な働き方ができる、人間関係が良好である。
こうした職場環境は、従業員が安心して働くための大切な条件です。
しかし、働きやすい環境が整っていれば、従業員は仕事に充実感を持ち、意欲的に働くことができるのでしょうか。
反対に、仕事に大きなやりがいを感じていても、長時間労働が続き、心身に負担がかかる環境であれば、望ましい職場とはいえません。
「働きやすさ」と「働きがい」。
似ているようで異なるこの二つについて、従業員と企業、それぞれの視点から考えてみたいと思います。
1.「働きやすさ」とは何か
働きやすさとは、従業員が安心して、無理なく仕事に取り組める環境が整っていることです。
例えば、適切な労働時間や休暇制度、公平で納得感のある人事制度、良好な人間関係、心身の健康への配慮などが挙げられます。
また、困ったときに相談できることや、自分の意見を安心して伝えられることも重要です。
つまり、働きやすさは、単に制度が整っていることだけではありません。
制度が実際に利用できること、そして日常のコミュニケーションを通じて、安心して働ける関係性が築かれていることも大切です。
2.「働きがい」とは何か
一方、働きがいとは、仕事を通じて意味や価値、成長、達成感などを感じられることです。
例えば、自分の仕事が誰かの役に立っていると感じること、自分の能力や強みを発揮できること、新しいことに挑戦できること、仕事を通じて成長を実感できることなどです。
ただし、何に働きがいを感じるかは人によって異なります。
仕事を通じた成長に喜びを感じる人もいれば、誰かの役に立つことや、責任ある仕事を任されることに充実感を覚える人もいるでしょう。
また、仕事と私生活の調和を大切にしながら、安定して働き続けることに価値を感じる人もいます。
大切なのは、企業や上司が考える「やりがい」を、すべての従業員に一律に求めないことです。
3.働きがいは、誰がつくるものなのか
働きがいは、企業が一方的に従業員に与えられるものではありません。
仕事のどこに意味や価値を感じるのか、何に喜びや達成感を覚えるのかは、一人ひとり異なります。
その意味で、働きがいは従業員自身が仕事の中で見いだしていく側面が大きいといえます。
しかし、それだけで十分でしょうか。
たとえ従業員が仕事に意味や価値を見いだしたとしても、それを活かせる機会や環境がなければ、働きがいを実感し続けることは難しくなります。
例えば、自分の経験を後輩の育成に役立てたいと考えていても、その機会が与えられなければ、思いを実現することはできません。
新しい仕事に挑戦したいと考えていても、意見を受け入れてもらえない職場では、意欲が十分に活かされないこともあるでしょう。
働きがいは、従業員自身の内側から生まれる思いと、それを受け止め、活かすことのできる職場環境との相互作用によって育まれるものではないでしょうか。
4.能力を発揮できないのは、本人の問題なのか
従業員が十分に能力を発揮できていないとき、その原因を本人の意欲や能力だけに求めてしまうことはないでしょうか。
しかし、能力を発揮できていないことと、能力がないことは同じではありません。
本人が自分の強みや可能性に気づいていない場合もあります。
また、能力や意欲があっても、それを活かせる仕事や機会が与えられていないことも考えられます。
さらに、職場の人間関係や仕事の進め方、評価制度などが、能力の発揮を妨げている可能性もあります。
ここで重要になるのが、従業員一人ひとりの能力や適性、経験、希望などを理解し、それらを活かしていく視点です。
その一つが、タレントマネジメントという考え方です。
タレントマネジメントとは、従業員の能力や経験、適性などを把握し、人材の配置や育成、能力開発などに活用していく取り組みです。
ただし、企業が一方的に従業員の能力や適性を決めつけることではありません。
本人との対話を通じて、まだ気づいていない強みや可能性を見いだし、それを発揮できる機会につなげていくことも大切です。
これは、従業員の働きがいを育むとともに、組織全体の力を高めることにもつながります。
5.働きがいに対して、企業はどこまで関わるべきなのか
働きがいを感じられない背景には、個人の価値観や事情が関わっている場合もあります。
企業が従業員一人ひとりの働きがいを決めたり、すべてを満たしたりすることはできません。
また、個人の価値観や生き方に過度に踏み込むことも適切ではないでしょう。
一方で、職場環境や組織体制、仕事の進め方、評価の仕組みなどが、従業員の能力発揮を妨げているのであれば、その改善を検討することは企業の重要な役割です。
働きがいを感じられない理由を、単に本人の意欲の問題として片づけるのではなく、職場環境や組織の仕組みに改善すべき点がないかを考える必要があります。
企業に求められるのは、従業員に働きがいを押し付けることではなく、一人ひとりが自分なりの働きがいを見いだし、それを仕事の中で実現できる環境や機会を整えることではないでしょうか。
6.働きやすさと働きがいを両立させるために
働きやすさと働きがいを両立させるためには、制度の整備だけでなく、日常のコミュニケーションが欠かせません。
従業員が何を大切にしているのか、どのような仕事に意欲を感じるのか、どのような能力を発揮したいと考えているのか。
こうしたことは、日頃から対話を重ねなければ、なかなか見えてきません。
また、リーダーには、自分の考えや判断が常に正しいとは限らないと認識する姿勢も求められます。
リーダーに必要なのは、自分の判断が正しいと信じる力だけではなく、その判断が間違っているかもしれないと気づく力でもあります。
従業員の声に耳を傾け、必要に応じて仕事の進め方や役割分担を見直すこと。
そして、一人ひとりの違いを尊重し、それぞれの強みを活かせる組織をつくること。
その積み重ねが、働きやすさと働きがいの両立につながっていくのではないでしょうか。
7.ウェルビーイングと組織づくり
働きやすさと働きがいを考えることは、従業員のウェルビーイングを考えることにもつながります。
ウェルビーイングは、単に一時的な楽しさや満足感だけではなく、心身の状態や社会的な関係性なども含めた、よりよい状態を考える概念です。
仕事においても、安心して働けること、他者との良好な関係を築けること、自分の仕事に意味を感じられることなど、さまざまな要素が関わっています。
しかし、従業員の満足度が高いからといって、必ずしも一人ひとりの能力が十分に発揮されているとは限りません。
反対に、組織として成果が上がっていても、従業員が過度な負担を抱えている場合もあります。
だからこそ、企業には「従業員は満足しているか」という視点だけでなく、「従業員の能力や可能性を、組織は十分に活かせているか」 という視点も必要ではないでしょうか。
まとめ ― 一人ひとりの能力を活かす組織へ
働きやすい職場と、働きがいのある職場。
どちらか一方を実現すればよいというものではありません。
働きやすさは、安心して働くための大切な土台です。
そして働きがいは、仕事の中に意味や価値を見いだし、自分の能力を発揮していくことと深く関わっています。
働きがいは個人だけの問題でも、企業だけの問題でもありません。
従業員自身が仕事の中に意味や価値を見いだすこと。そして、企業がその思いや能力を活かせる環境と機会を整えること。
その両方が重要なのです。
一人ひとりの違いや可能性を理解し、それぞれの能力を活かせる組織づくりは、従業員の成長だけでなく、企業の持続的な成長にもつながっていくと考えます。
株式会社マルション・アンサンブルでは、コミュニケーション、リーダーシップ、ハラスメント防止などの人材育成研修や組織づくりの支援を通じて、一人ひとりが安心して能力を発揮できる職場づくりをサポートしています。

